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2017年8月29日 (火曜日)

最早「吸わない権利」

いまだ裁判例で認定されていない新しい権利。主張するのは自由ですが、認定されるのはなかなか困難です。しかし、ある権利は、立法を待たずして既に権利として定着している感があります。
他人の吸う煙草の煙を吸わない権利。これを認定した裁判例はないはずですし、これを主張する根拠となるものはなく、従来マナーの問題とされていました。
たとえば、喫煙スペースの設置された公共の場ではそのスペースでのみ喫煙する。他人の前で煙草を吸う場合には一言確認する。こういったマナーが確立され、喫煙者のモラルにより、嫌煙者の煙を吸わない利益は確保されてきました。
しかし、マナーはあくまで社会的地位のある人や、相手と特別な人間関係がある場合にのみ有効で、嫌煙者グループで飲食店で食事をしている隣のテーブルが喫煙グループであるような場合、嫌煙者の利益を守る実効性ある手段はないのが現状です。
受動喫煙禁止法はまだ成立しませんが、それでも社会は間違いなく嫌煙者側を優先する対応が進んでおり、裁判上直接根拠にすることはできないまでも、最早権利に匹敵する強い主張が可能になっていると思われ、その傾向は今後ますます進んでいくと予測されます。
そのような中、飲食店などが完全禁煙にするか悩んでいる、あるいは、禁煙にして客が減ったら誰が賠償してくれるのか、といった声をしばしば耳にします。
吸わない権利がまだないとしても、喫煙前に周囲に一言確認するべきことと、これに対して嫌煙者が「ノー」という権利がある(ただし強制力はない)ということはもはや確立したもので、かつ、後者で「ノー」と言われない可能性は非常に低いと想定されること、こうした事実をベースにすると、不特定多数の人が比較的近接するような場所では全面禁煙の措置を講じるのが賢明なように感じます。
それにより喫煙者の客が減るかもしれませんが、喫煙者よりも相当大きい母数を有する非喫煙者の来店が増える期待値を考えれば、これで直ちに大きな損失につながるとは考えにくいです。
もちろん、現時点で何ら強制力のないもので、各自の自由が意に反して制限されることはありません。しかし、予想される社会の動向を冷静に並べていけば、取るべき対応は1つに絞られてしまう場面のようであり、その観点からも、最早「吸わない権利」は権利に匹敵していると言えるかもしれません。

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