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2010年7月29日 (木曜日)

契約の申し込みは撤回できない

契約締結に至ろうとする当事者間において、信義則上、既になした契約の申込は撤回できない、という法理があります。
本格的に争う案件では、訴訟で、きめ細かな信義則論を展開することになるのですが、そのような大きな案件でなくとも、このようなケースは結構身近にあります。
例えば、示談や和解の交渉。
自分では100万円が相当な賠償金だと思っていたとしても、事件の早期解決のため、120万円を提示する場合があります。
これを提示してしまうと、賠償額の最低ラインが120万円にあがってしまい、被害者も裁判所も、その金額以下での和解に消極的になってしまいますので、事実上、一度提案した和解案を撤回できない結果となります。
早期解決のために、誠意を見せても、これが相手に伝わらなければ、単に自分を不利益にしてしまうだけの場合があるという恐ろしい事実がわかります。
自分の意思に反した不利益な提案をするときは、それを受けてもらい、後々問題が残らないことを予め確認したうえで、提案すべきなのでしょう。
もちろん、事情が変わった、と主張していくことはできますが、事情の変化は相対的で、その評価は主観的ですので、契約申込を撤回する説得的な説明はなかなか困難な場合が多いでしょう。
もちろん、契約を締結してしまえば、もはや契約の解消は非常に困難であることは言うまでもありません。
人間は必ずしも、常時、合理的に行動しているわけではありませんので、個人的には、矛盾挙動を強く非難することは嫌いなのですが、世間的に見れば、一度言ったことは、重大な事情変更がない限り撤回できない、というのが常識になりつつあります。
自分の言動を吟味し、責任を持って行動することの重要性を再確認しておかねば、大きな落とし穴にはまる、そう思わせる大変なポイントだと思います。

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