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2010年7月27日 (火曜日)

ビビリは大損

なんでこんな書面作ったの?
と不思議に思ってしまうケースはしばしばあります。
要はかけひきに負けたのですが、交渉の基本を読み解くと、極めて不利益な内容で書面を作成してしまう人の気持ちが結構理解できます。
交渉の基本は、評価的要素の強い部分で、いかに相手にリスクを感じさせられるかがポイントです。
客観的に明らかな基準や規則を争ったり、客観的に証拠がある点を争うことは、通常の交渉者相手には、ほぼ無駄骨です。
そうでない、証拠の薄い事実関係や、事実を前提とした評価について、意見の相違をつきつけ、相手にリスクを感じさせられれば感じさせられるほど、大きな譲歩を引き出せるでしょう。
我々の仕事であれば、「判例」という評価の指標を援用できると、相手に効果的にリスクを説明することができます。
さて、かけひきに負けて、不利益な書面を作成してしまった人にはいくつかの共通の要素があるように思います。
全体的に気弱というか、リスクを過大に考えこんでしまい、早々に白旗をあげてしまうケースが多いようです。
それ以外でも、職場の上司や取引先に対しては、「お世話になっている」とか、「迷惑をかけたくない」という遠慮から、白旗をあげるケースがあります。
警察で不利益な調書が簡単に作成されてしまうのは、警察に対してつきつける不利益がなく、かえって、否認することによる留置期間と取調べの延長のリスクが非常に大きいことがあるでしょう。
弁護士は交渉家ですが、訴訟をしたときの結論がはっきり見えない場合も当然あります。
そういうとき、すなわち、自分の信念に照らしてはっきりこうだ、といえない場合に、自分の言い分が正しいと明言して、相手のリスクをつきつけるのは、人としてよいふるまいではないと感じつつ、プロの交渉家としては、やっていかなければならない活動だと思います。
こうしたかけひきのすえ、先にびびった方が大きく譲歩して、できあがった書面の作成経過について、裁判所は耳を傾けはするものの、あまり理解はしてくれません。
不利益な書面は作成しないにこしたことはありませんが、作成してしまった後に相談にこられた場合、できる限り、当事者の心理状況と、作成経過を丁寧に聴取し、少しでも裁判所に理解しやすいかたちで提起できるよう心がけていきたいと思います。

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