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2010年5月27日 (木曜日)

判決を意識した指揮?

民事と刑事の裁判官は、当然ながら、事件処理の仕方が全く異なります。
その差異を生み出す原因の1つとして、民事では必ずしも担当した事件につき判決を書くわけではないのに対し、刑事は必ず判決を書かなければならない、という違いがあります。
刑事の裁判官は1回目の期日から、まず自分が納得し、次に被告人も納得する判決の作成に向けて手際よく事件処理を行います。
それゆえ、裁判所から積極的に主張内容についての求釈明や証拠構造等の質問があり、質問がなされた点はかなりの確率で判決に反映されます。
それに対し、民事の裁判官は判決を作成することを想定して訴訟指揮はあまり行いません。
自らの感覚や経験に基づいて、疑問に感じた点を補充で釈明を求める程度で、多くの場合は、主張がひととおり出揃うまでは、代理人任せで事件が進むことが多いです。
場合によっては、裁判官から事件と関係ない質問がなされることも多いですが、これは、実は、要件事実外の価値観を理解して、こっそり裁判所で利害を調整しようとする和解に向けたテクニックだったりします。
最近、若手の裁判官を中心にかなり早い段階で心証開示する方も増えていますが、客観的な書証のみで結論の明らかな事案を除けば、裁判官は結審するまで心証形成しないことが多いと知っていますので、私は、早い段階での和解勧試や心証開示はあまり信用していません。
裁判官がこのような事件処理をするのであれば、弁護士としてもやるべきことが整理されてきます。
刑事事件では、裁判所の訴訟指揮は、判決の大きなヒントであるから、裁判所の訴訟指揮から、裁判所の考えを推測し、それに沿った学説や判例の有無を調査して、有利なものはもれなく利用し、不利なものは手当てすることが大事です。
民事事件では、裁判所は「普通に考えたらこうだよね」という印象で事件を見、和解も自らの心証に拘泥せず、当事者の希望の真ん中より少し被告よりのポイントで和解が成立しないかを見ていることが多いと思います。
「普通に考えたらこう」というのは多くの場合、最終的結論もそうなることが多いですが、証拠をきちんと読み直したら結論が変わった、ということは決して珍しくないことです。
そうすると、訴訟前に相手方と交渉し、証拠関係と相手方の希望条件がそろっていれば、一般的な裁判官が(証人尋問前に)どのような心証を持ち、どのあたりが和解の落としどころであるかも読めてしまうことが結構あります。
そこまで読めてしまうと、①現在の相手方の提示条件②裁判所で想定される和解条件③判決、の3拓の中で一番有利なものを選択すればよいだけです。
民事と刑事の裁判官、どちらがうまくつきやすいかといえば、一長一短ですが、刑事では裁判所の指導に積極的に乗り、民事では裁判所の考え(=常識的一般人ならどう考えるか)を積極的に先読みし、迅速かつ確実性の高い活動を心がけたいです。

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