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2007年11月16日 (金曜日)

被告人の意見の尊重と弁護人の真実義務

被告人が「罪は犯していないから無罪を主張してほしい」と言った場合、弁護人は有罪だと思っても無罪主張しないと首がとびます。
被告人が「罪を犯したから情状立証してほしい」と言った場合、弁護人は無罪だと思えば無罪主張してよいです。
被告人の自白があっても、それが違法に収集されたものであったり、補強証拠がなかったりして、手続上理屈上、無罪となる可能性がありえるからです。
ただ、被告人が情状立証してほしいと言っているのに、これを無視するのは望ましくありません。
しかし、無罪を主張するが、もし有罪なら・・という予備的な主張はなかなか評価されにくいです。
そういった弱気な主張は、最初から主位的な主張をあきらめているととらえられかねないからです。
そこで、被告人質問の内容や書証の立証趣旨をうまく操作して、無罪主張の中に、情状の要素をうまくすべりこませることができるかが弁護人の腕の見せ所となります。
同様に、被告人が「罪を犯したけど無罪主張してくれ」と言った場合、弁護人は証拠の不備を探し、無罪主張をすることが要求されます。
では、被告人が「罪はおかしていないけど、否認して罪が重くなるなら、最初から自白して情状を立証してほしい」と言ってきた場合どうするか。
非常に難しい問題ですが、まず証拠構造を確認のうえ、被告人に勝算はないか十分に検討したうえで、勝算がある場合には、被告人を励ましがんばるよう説得することが大事だと考えます。
被告人を説得しきれなくとも、弁護人の意見として無罪主張が構成できるか最大限に考えたうえで、その中に情状要素をうまくとりこんでいくことも一つの手だと思います。
では、被告人が「罪は犯していないが、有罪の可能性が高いなら刑を軽くするよう尽くしてほしい。今、A罪で起訴されているが、実はB罪(A罪より刑が軽い)を犯したことにして刑を軽くする主張をしてほしい」といわれた場合、どうするか。
被告人の言葉を最大限に信用しても、B罪成立は明らかなウソ。弁護人が明らかなウソを主張してよいか、主張せずに被告人の要求にこたえずに放置してよいのか、非常に難しい問題があります(検察官請求証拠の構造上、B罪成立の積極的な証拠や事実があればともかく、消極的に証拠の不備をついてB罪主張する場合を想定しています)。
私選弁護であれば、辞任すればよいですが、国選弁護の場合、裁判長に上申して解任してもらうことになるのでしょう。
しかし、解任してもらうための理由の上申で「被告人が明らかにウソをついているから弁護士としての真実義務に違背する」とストレートに書くわけにはいかず、難儀な問題は残ります。
真実、被告人の意見、弁護人の心証と真実義務、三者がからみあった事件は例外なく紛糾し、誰かが満たされない思いを抱くことになります。
これを解決することは不可能でしょうが、せめて、真実を堂々と主張できる弁護士でありたいと強く感じています。

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