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2007年10月11日 (木曜日)

記憶は日々失われ・・

大型事件などでは、証人尋問が事件から相当期間経過しているケースはよくあります。
人の記憶もせいぜい2年くらいで、それ以上経過すると、書面に残っていない事実はほとんどあやふやになってしまいます。
陳述書の作成段階でも記憶があやふやで、法廷ではもっとあやふやになっていると、裁判官には陳述書と証言の齟齬を指摘され、相手代理人には記憶の不備をつつかれ、パニック状態になりさらに変なことを口走ってしまう、という最悪の展開になりかねません。
証人尋問への臨み方で裁判の結果がかわるというのは、本来あまりないケースですが、そうならないよう当事者・代理人とも気をつけねばならないことがあります。
私が担当したとある長期戦になった事件では、既に3年以上経過した件であったことから、証人尋問で記憶の混乱が生じる可能性があり、尋問前にあらかじめ事件直後に作成したメモを提出しておき、作成経過を尋問で確認しました。
長期戦が予想される事件は、事件受任段階から尋問を見据えて、作成したメモを確保したり、新たに記憶していることを覚えている範囲でメモを書かせておかねばならないことを再認識しました。
この他、陳述書作成段階でも、工夫すべき点はありそうです。
陳述書の作成は綿密に行えば尋問よりはるかに多大な時間を要するものです。
主張書面をパッとコピー&ペーストして、人称と語尾を変えれば、かたちのうえでは出来上がりますが、尋問の現場であたふたすることになります。
裁判官は弁護士が思っているよりも、陳述書を重視し、これを熟読して証人尋問に臨んでいることが最近よくわかり、「いかに主張とリンクさせるか」よりも「いかに尋問結果とリンクさせるか」が大事だと思います。
裁判の流れは、陳述書作成→人証の採用→証人尋問で、陳述書は作成したが、人証は採用されなかったり、和解で解決したりというケースはままります。
忙しい中、とりあえず陳述書はかたちだけ整えて、あとは尋問になったとき対応しよう、と考えがちですが、よりよい弁護活動をするには、主張整理→立証を要する主要事実・間接事実の確認→最終準備書面の骨子の作成→最終準備書面作成のために必要な題材のピックアップ→尋問事項の作成→陳述書の作成、と、現実の裁判とは逆行した流れが適切ではないかと考えます。
その中で、記憶の消失で代理人の思うような答えが期待できない部分を確認しながら、「どうすれば裁判官はこちらに有利な判決を書けるか」「どうすれば最終準備書面で説得的な論証ができるか」などを考えながら、角度をかえて打ち合わせをし、尋問で揺らがない準備を、陳述書作成段階で行う、という試みが大事だと思いました。
尋問突入より、和解で解決したほうがはるかに仕事量は少なくて済む、というこの業界の通説は一面で妥当である反面、多面では上記のような作業をするならあんまり変わらないともいえそうです。
いずれにせよ、長期戦になる事件では相当先のことまで想定して早め早めに手をうつことが大事で、今後色々工夫してやっていきたいと思います。

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