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2007年9月21日 (金曜日)

訴訟上の戦意喪失

裁判は必ずしも微妙な駆け引きで勝敗が決まるものばかりではなく、最初の段階で結論が明らかなものもよくあります(つきつめれば、優秀な弁護士や裁判官は書証が出揃えば細かい主張や尋問結果を見るまでもなく結論を読みきれるようです)。
そういう事案の場合、当事者の戦意喪失はしばしば見られることです。
日本の民事裁判の判決は、全部棄却は全体の1割程度で、多くの場合被告が負けます(ただし、地裁裁判官は事実認定や法律解釈の点で原告よりな感じはしますが)。
それゆえ、被告が最初から戦意喪失し、裁判所に出頭しなかったり、最初から和解を申し込んだりするケースは決して珍しくありません。
他方で、原告が戦意喪失するケースは時々みかけます。
法律を良く知らない当事者本人が、自己の正義を主張して本人訴訟を提起したものの、要件事実は充足しなかった、というケースが一番多いと思いますが、弁護士代理で、原告が戦意喪失するケースもあります。
私がよく見かけるのは、弁護士としては、当事者の勝訴のためにできる限り幅広く、また、妥当性のある法律構成を主張したいのですが、当事者は特定の主張に固執し、その部分しか証拠を持ってこない場合です。
人によっては「俺が言うんだから間違いない」と、自らの証言ですべて証明されると思い込んでいる人もよくいますが、客観的な書証を伴わない当事者尋問ほど不安定なものはなく、弁護士が最も苦手なタイプです。
被告側が戦意喪失する場合は、弁護士が成立しうる抗弁を見落としたような場合を除き、原告側が丁寧な弁護活動を行った結果といえるでしょう。
戦意喪失した側の弁護士には特に問題はない場合がほとんどだと思います。
逆に原告側が戦意喪失する場合は、弁護士が十分な検討を怠ったり、依頼者とうまくつきあえなかったところあたりに弁護士の落ち度がありえます。
原告が途中で戦意喪失した場合、訴えを取り下げるか、僅少な解決金で和解するか、いずれにせよ、格好が悪く、あまり好ましくない解決方法です。
弁護士の仕事は依頼者にできる限り最大の利益をもたらすこと。
着手金だけもらって、「負けました」ですますことも、お得な和解案が転がっているにもかかわらず「依頼者を説得しきれませんでした」も、あまりよいことではありません。
原告勝訴率が高いことは、現在のところは、弁護士がよくがんばっていることの現われとみてよいでしょうが、弁護士大増員によってアメリカの法曹界のようにならないよう、今こそ弁護士業界の正念場である気もします。

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