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2007年5月22日 (火曜日)

一般人と司法実務の認識の差をどう埋めるか

一般人が、司法実務について誤解しやすい例をいくつか挙げて、それにどのように対処していけばよいか考えてみたいと思います。

1,詐欺・強迫は簡単に成立する

ちょっとおどかされただけで、強迫が成立するといいはってきかない相談者が、市役所相談では2回に1回くらいの割合であたります。

契約内容がやや不当であったり、成立過程にややまっとうでない点があったとしても、解約全体が覆されることはそう簡単には起こりません。

詐欺についてはなお一層、成立は困難です。

理不尽な経緯に同情するのも大事ですが、署名・捺印の重大性と責任を、相談者に嫌み無く伝え、同様の失敗を繰り返さないようにさせるのも大事な仕事だと思います。

2,地裁で負けたら高裁で争える。さらに最高裁までもっていける。

これはほとんどの人が誤解していますが、地裁で納得のいく判決がもらえなかった場合、高裁にもっていっても新たな証拠を提出する機会は限定され、ほとんどの事件は1回開廷しただけで審理を終結します。

そして、新たな証拠を出せなければ、1審の判断がそのまま採用される可能性が高いのも自明の理です。

最高裁へ上告しても、ほとんどの事件は審理の必要なしとして、門前払いされるのが現実です。

そういうわけで、弁護士としては、1審の証人尋問前に全証拠をつぎこんで裁判の流れを形成したいのですが、人によっては証拠を探すのを怠ったり、出し惜しみしようとするので苦労します。

3,証人尋問で決定的な証拠を相手にたたきつけて劇的な逆転勝利!

・・・なんて展開はドラマの中だけです。

未提出証拠をいきなり尋問で証人につきつけたらまず間違いなく異議が出ます。

その証拠が弾劾証拠なら、尋問後提出して、最終準備書面で尋問結果をたたけますが、弾劾証拠1つとの内容不一致で、証言全体の信用性が損なわれるというのはこれまたあまりありません。

実質証拠を尋問までに出し惜しみしていたら、時機に遅れた攻撃防御方法の却下により、証拠自体採用してもらえなくなるリスクすら発生することになります。

以上に対処するためにも、弁護士は要件事実と証拠構造を的確に把握し、依頼者のもってきた証拠を消極的に使用するだけでなく、積極的に証拠の薄い部分についての間接証拠・補助証拠を収集するよう心がけねばならないと思います。

4,執行猶予期間満了すれば前科もなくなる

執行猶予の説明をした際に、前科としては残ることを説明すると、困ったり、怒り出す被告人がときどきいます。

執行猶予=おとがめなし、というイメージがあるのかもしれませんが、有罪である以上、前科が消えることはあり得ません。

このような考えをするのは、その人にとっては些細な事件で、有罪という意識が欠如しているからなのかもしれません。

そういう人をそのまま罪の意識の欠如したまま社会に戻せば、同様の事件の繰り返しになりかねず、弁護人としては有罪であることをしっかりと説明し、理解させて矯正教化の一端を担うことが大事なのだと思います。

5,弁護士に破産処理を依頼した時点で債務はなくなる

法律相談のときは真っ青な顔で「先生なんとかしてください!」と懇願してくるのに、受任通知を出した途端人が代わり、弁護士費用の分割金も支払わない、電話をかけても出ない、折り返し電話をかけてこない、用意をお願いしている書類も持ってこない、という人が時々、されど結構な人数います。

債権者からの取り立てがなくなりフリーになるともう債務を免れたかのように感じ、弁護士が裏でどれだけ頑張っているか、債権者がどれだけ損失を被っているか考えない人には少し悲しい思いがします。

こればかりは、破産事件を受任するにあたり、その人がどれだけ大変なことをしようとしていること、債務がなくなるまでの道のりが平坦ではないことをしっかりと説明するしかないと思います。

なんだか、相談者に説教すべきというのが結論みたいになってしまいましたが、弁護士の仕事はただ単に依頼者の要望をかなえるだけでなく、社会的正義を正確にかつ嫌みなく教えることも含まれますので、これも大事な仕事なのでしょう。

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