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2007年2月23日 (金曜日)

自白恐ろしや

鹿児島地裁で12人の被告人に対して無罪を言い渡した判決がありました。

この判決、裁判員制度開始を前に刑事司法の問題点を大きく露呈するものとなりました。

証拠は一部の被告人の捜査段階の自白のみ。

憲法・刑事訴訟法上自白のみでは有罪とはされず、自白以外の補強証拠が必要とされています。

しかしながら、自分以外の者であれば、同一容疑についての共同被告人の自白であっても、他人の証言であり、これのみで有罪とされる場合があります。

また、賄賂や公職選挙法違反といった、水面下で密かにお金が動く事件では、客観的な証拠はほとんどなく、補強証拠は極めて要件事実の立証から遠い状況証拠でも足りる場合があります。

そういうわけで、有罪・無罪を分ける分水嶺はまさに、捜査段階の一部の被告人の自白の信用性でした。

供述の信用性を判断する一要素として、供述内容の具体性・迫真性といった点がありましたが、今日判決のあった事件では、不自然に迫真性がありすぎる点などが、逆に信用性を疑わせる要素となったようです。

しかし、この裁判に、職業裁判官が4年もかけて、ようやく自白の信用性が判断できましたが、これを裁判員が行うとなると至難の業でしょう。

近時、公判前手続をしても、公判まで1年以上かかる事案も増えているという報道もあります。

また、検察官が世論に迎合して、いささか無茶な起訴や求刑をしている件が増えているのではないかとも弁護士間では話題になることもあります。

こんな調子で裁判員制度は有効に機能するのか、取り調べの可視化を中心に、いかに裁判員に裁判で何をすれば良いかわかってもらう、そして実践してもらうかを直前まで常に議論していく必要があると思います。

それはさておき、今日の事案では、長期間の裁判の負担を考え、自白して早く低額の罰金か執行猶予で済ませてもらおうと考えてもおかしくありませんが、それを正、最後まで戦い抜く勇気を与え続けた支援者の方々のすばらしさに感動しました。

厳しい取り調べや裁判の中で、否認を貫くことの困難さは想像を絶するものがありますが、これに耐え抜き、自分の正義を貫く、そういう思いにさせてくれる人というのは本当にかけがえのないものです。

弁護士の中にも、「否認してもたぶん通用しないから早く自白して裁判終わらせた方が得だよ」などという人が増えているようですが、とんでもない話で、弁護士も否認している被告人を勇気づけ、最後まで信じて最善の弁護活動をしてあげることの大事さを教えてもらいました。

それにしても、ここ数日、事務所で日が変わる直前にブログ更新をする日々が続き、少し忙しくなってきたのかなと思います。

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