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2006年4月10日 (月曜日)

公判前整理手続の課題

本日東京地裁で、ある殺人被告事件の判決がありました。

この事件の特色は、否認事件であるにもかかわらず、土日を挟んで6日連続で開廷し、通常1年近くかかる裁判をわずか1か月で判決にもっていったというところにあります。

刑事裁判の否認事件となると、これまで審理に相当の時間を要しましたが、昨年11月から施行された公判前整理手続の活用によって、劇的な変化を遂げることとなったケースとして注目されます。

公判前整理手続の利用により、争点と証拠整理が早期に行われ、集中審理によって審理期間を短縮するのですが、これによって被告人にとっては、無罪の者は早期に解放され、逆に有罪の者は早期に受刑を開始して、早期に解放される、という恩恵を受けることができます。

しかし、他方で、普段忙しい弁護士にとっては、忙しさにさらに輪をかけるような制度であり、もはや悲鳴もあがらないほどの惨状となりかねない制度でもあります。

審理のためには証人尋問を行うこととなりますが、証人尋問の準備はただでさえ多大な労力を要するにもかかわらず、これが毎日行われるというのでは、他の仕事には全く手がまわらなくなるおそれがあります。

また、証人尋問の結果は、通常書記官が書面にしたうえで、それをもとに、弁護士は次の証人尋問の準備をしたり、最終意見をまとめたりしますが、公判前整理手続のもとでは、このように書記官の尋問調書の作成を待つことができず、弁護士事務所の事務員が法廷に行ってとったメモをもとに次の準備をすることとなります。

公判前整理手続においては、証拠開示が可能になるなど、弁護側のメリットも理論上は大きいのですが、このように、超過密日程で審理を行うため、開示された証拠を十分に検討する余裕がそもそもあるのか疑問が残り、法曹三者の能力と自覚次第では、重要な点がポロポロと抜け落ちた雑な審理にもなりかねません。

公判前整理手続を十分に活用し、充実した裁判を展開するためには、法曹三者が日々自覚を持って鍛練し、能力を高めていかなければならないと考えさせる事件です。

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