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2006年4月21日 (金曜日)

共謀罪成立の是非

衆議院の法務委員会で「共謀罪」の新設についての審議が始まりましたが、大荒れの状況となっているようです。

日本国の刑法は危険思想を抱いただけでは処罰されず、客観的に見て危険で許されない行為に及んだときにはじめて処罰がなされます。

ところが、共謀罪が成立してしまえば、何か犯罪をしようと話しあいをしただけで処罰されることになってしまいます。

現行刑法上も共謀共同正犯という類型が事実上認められており、これは①実行犯が犯罪を犯した場合に、②事前の意思疎通の程度や分担した役割の大小、当該犯罪を行う動機や利益の大小等を考慮して正犯同様の役割を果たした人物に対しては、実行行為を行わなくとも正犯として処罰できるというものですが、そもそもこの類型についても疑問を呈する人は少なくありません。

今回の共謀罪はこのような共謀共同正犯の要件から、①正犯の実行と、②謀議以外の諸事情の大小にかかわらず、ただ話しあいをしただけで処罰するもので、処罰要件を大幅に拡大しているため、各方面からの非難が大きいです。

もっとも、裁判による処罰という観点から言えば、違法性の解釈や執行猶予の判断基準次第では、現行の共謀共同正犯や予備罪による処罰と大きく変わらない可能性はあります。

しかし、私は捜査段階における影響は相当程度あるのではないかと思います。

これまでは謀議をしただけでは犯罪とならず、捜査はその先の実行行為の有無に向けてなされるものでしたが、共謀罪が認められると、謀議自体が犯罪となるため、謀議の有無を探るための盗聴等の捜査範囲が拡大する可能性は大きいです。

また、謀議のみによって犯罪が成立するため、多くの犯罪に関与している疑いがあるが、証拠不十分の場合に、些細な謀議を取り上げ逮捕し、身柄確保のうえで捜査を進めるという方式も認められてしまう可能性があります。

制度が適切に運用されるのならば、法律改正といえそうですが、そうでない場合、法律改悪ともなりかねないものですので、成立に関しては慎重に審議してほしいと思います。

その点で、適用範囲が不明瞭な与党案が強行に採用されることは是非とも回避してほしいところです。

とはいえ、この議題が持ち上がった理由は国際組織犯罪防止条約にありますし、それとの絡みで、今後は組織的重大犯罪の共謀のケースに限定して審議されるのではないかと私は思ってます。

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今週末に可決してしまうのか。大反対の「共謀罪」とはいかなる法律?という題名で、新たに記事をアップしましたので、興味のある方は、是非、お読み下さい。 [続きを読む]

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